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最近、がん患者仲間が集まると治療費のことがよく話題に上ります。日帰り内視鏡手術ですむような早期がんならまだしも、進行がんや再発がんで長期にわたって抗がん剤治療を受けるような場合、治療費がとても高くなるからです。「これから子どもに教育費がかかるのに、私の治療費で貯金を取り崩してもよいのかって悩むのよね」と中学生の子を持つ再発乳がんの母親が嘆くと、「私なんか、仕事をやめると治療費払えないし、生活もできないし、通院と仕事で毎日へとへと…」と独身の高校教師、大腸がん4期のレイ子さんも目をシパシパさせています。レイ子さんはFOLFOX(フォルフォックス)という三つの抗がん剤を組み合わせた治療に加えて、アバスチンという分子標的薬(がん細胞だけを狙い撃ちし、正常細胞には影響が少ない薬)を使っているのですが、これがよく効いて、がんの進行が抑えられ仕事を辞めずにすんでいます。でも、自己負担3割の健康保険でも治療費は月に20万円もかかります。「高額療養費制度」で3カ月後に半額以上は戻るのですが、とにかく毎月20万円を病院の窓口に支払わなくてはなりません。
以前なら、再発すれば、もう打つ手のなかったがんでも、今は、次々に新しい抗がん剤が使えるようになって、長生きできるようになりました。それはありがたいことですが、開発に莫大(ばく だい)な費用がかかる新薬の薬価は、どれも半端でなく高額です。価格も知らないまま治療を受け、いざ会計をする段になって手持ちのお金では間に合わず、あわてて病院のATMに走ったという患者仲間も多いのです。
人工透析は週3日通院し、1日当たり6時間もベッドにしばりつけられる大変な治療ですが、患者の負担額は月1万円以下です。パーキンソン病などの神経難病も特定疾患として医療費は国庫負担です。ところが、がんの治療は、公的補助のはざまに置き去りにされています。治療費が払えないので抗がん剤を断る患者もいます。家族に負担をかけないため、わざわざ離婚して生活保護を受け、無料の化学療法を受ける女性患者もいます。新しい治療法が開発されるにつれて、がん患者の経済的負担はますます深刻になり、命は続くけれど生活は続かないという追いつめられた事態になっています。どうすればいいのか。患者同士、顔を見合わせ、ため息をつくばかりです。(はたえ?のぶこ=福岡市城南区)