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 発達障害の一つ「注意欠陥多動性障害(ADHD)」の患者に起きる自尊心低下などの精神状態を疑似体験できる装置の貸し出しを、製薬会社ヤンセンファーマ (東京都千代田区)が始めた。
 周囲の無理解や非難にさらされ続ける患者の状況を一般の人に理解してもらうことで、患者が成人後にアルコール依存やうつ病といった二次的な問題に陥るのを予防、改善するのが目的。同社は2008年に、ADHD患者にみられる不注意などの症状を疑似体験する装置も開発している。
 今回の装置を監修した北海道大子ども発達臨床研究センターの田中康雄教授によると、ADHDは不注意や多動性、衝動性を主症状とし、患者は注意を集中できず、行動や衝動をコントロールできない。学齢期の子どもの3~7%を占め、最近は成人のADHDにも注目が集まっている。
 「わがまま」「勝手」「自己中心的」などと周りから批判され続け、生きづらいという気持ちを強く持っており、周囲がほめたり認めたり、傷つきやすさに配慮したりすることが必要だという。
 装置はパソコンとヘッドホン、ゴーグル型のディスプレーで構成され、患者の目で見た日常生活の映像が映し出される。テレビに気を取られて弁当を学校に持っていくのを忘れ、母親から「何度言ったら分かるの」と注意されるなど、さまざまな「しかられる場面」が展開される。
 自身もADHD患者だったNPO法人「えじそんくらぶ」の高山恵子代表は「見ていると辛さがよみがえってくる。こうした経験が毎日続く。症状だけでなく、症状のある人間を分かってもらいたい」と話している。